マーガレット・リヴァの散策

雲一つない快晴。ゆっくり眠った。8時半に頼んでいた朝食に慌てて起きたが、これではまるで民宿。このB&Bは他の部屋の客とともに食堂で朝食をとる。といってもテーブルはわずか3卓。ヴィクトリア州からきたカップルが、昨夜VATで見かけたと言う。
10時から、町に近いマーガレット・リヴァの南地区のワイナリー4箇所を廻った。いずれも壮麗で清潔で大きな公園のよう。自然の傾斜と高地の平原を活用した、眺めがよいブドウ畑が入口から人を魅了する。最初のCape Mentelle(5万ケース)は、近年ヴ-ヴ・クリコが買収した。国道からの入口が長く静寂で、ワイナリーの辺りは小さな池と林になっている。テースティングの後、素敵なTシャツ2枚と、カベルネとシラーズをブレンドしたMarmadukeを買う。わずか14ドル(950円)でこの味。有名なシャルドネはテースティングなし。販売のみ。躊躇する。

 

次いでRedgate(8千ケース)。文字どおり入口が鮮赤。日本にも輸出しているようだ。Voyager Estate(2万ケース)は入口奥の大きなポールに豪州国旗が翻り、まるで国立墓地。さらに大規模な改修を行っている。花に囲まれた通路の奥に、レストランと土産売り場の充実した館があり、テースティングも軽やかに出来る。

 

Leeuwin Estate(4万ケース)に至っては、入口からマーラーの交響曲が鳴り響く雰囲気を持つ。ここで昼食と相成った。
看板のart seriesのワインはテースティングだけだと2.2ドルを取る。昼食を取れば無料とあって、何杯か飲んだ。さすがにシャルドネは素晴らしく美味い。ピノ・ノアもsplendid。こうなると、オーストラリアの特長を感じなくモンラッシェの味わいだから美味く思えるのか、オーストラリアの味に馴染んできて美味く感じているのか、自分が分からなくなってきた。一本75ドル、5千円である。買わず仕舞い。
天下に名声が轟いたこのルーウィンエステートでは、毎年5千人を集めたコンサートが開かれる。その芝生を見ながらの食事は確かに贅である。日差しはアデレードほどではないにしても強烈で、テラスから徐々に陽がテーブルに近づいてくるのにはたじろいだ。

食事は、世界でこの地にしかいないfresh waterに棲む10p位のmarron fishと言うので頼んだら、蝦、ざりがにの類。アジアンテーストと書いてあったが、酸が強すぎた。味噌味やenoki mushroomもあった。併せたsauvignon blancが香り高くて美味。vegetable curryは肉の替わりが豆腐でジャガイモと豆。ホーレンソウとヨーグルトが乗っている。それに米とチャパティ。美味かったか? カレーはやはりダッカでしょう。

 

夜はVat再び。この店は2年前のオープンで、大繁盛。要予約。多少気取ったカップル、家族が陸続と来る。客の服装で簡単なことに気がついた。とても暑いから軽装だけど、男性はすべて襟付きシャツ着用(ワイシャツでもポロシャツでも、長袖・半袖でも構わない)。女性は色鮮やかなシャツか薄いワンピース。目立たないエチケット、ドレスコードがあるようだ。Bridgewater MillではTシャツ姿で悪かったね。
せっかくパース、オーストラリアの西端まできたのだからインド洋に沈む夕陽を見たいと言ったら、岬名を教えてくれた。5kmも走れば、素晴らしい景観が見れるはずだ。ケープ・メンテルで今朝買ったMarmadukeを持参しラムに合わせたが、昨夜の鴨の方が良かった。立派なワインだ。今日は47kmしか走っていない。今夜は寒くもない。

 

ワイングラスの脚を持ってワインを飲むのがフォーマルでエレガントとされる。やや冷たい感じと言ってもよい。グラスの脹らみの底部を掌で無造作に握り、 肘までついて相手の目を見ながらワインを飲んでごらん。えらくセクシーだよ。
男がやるんじゃない!!

翌日は10時から行動した。空は相変わらず屈託がない快晴。最初に向かったのがマーガレット・リヴァーに入る前の村にあったRegional Wine Center。一見ワインショップである。ワインの品揃えも見事だし、日本へも輸出する。大変有益な店で、セラードアがなく見学するには事前の予約が要るMoss Woodに電話を入れ、見学の承諾も取ってくれた。

 

 Moss Woodはセラードアがなく、入口に小さな看板しかなく分かりづらい。5,000ケースしか産出しないが、この地区は勿論、オーストラリアを代表するワイナリーで、見学客を取るまでもなく生産と販売に専念しているのである。敷地内に入ると池上の町工場の雰囲気で、奥に小さな事務所がある。Ms Reneyがセラーの中を丁寧に案内し、熟成中のChardonnay 2000をステンレスタンクから、そしてPinotとCabernetをフランス製樽からグラスに注いでくれた。熟成途上のワインをテースティングするのは初めてである。シャルドネは果実味も雑味も凝縮していてとても爽やかだったし、ピノとシャルドネはミディアムボディで将来の期待大のものがある。
ブドウ栽培地は砂地で、その中、優に50pはある巨大で大粒のブドウ房を初めて見た(後でCullenで聞いたら食用で、ワイン用のブドウの間に植えたりするそうだ)。もちろんここでは手摘みで、少量収穫。大変親しみがもてたワイナリーだった。

 

その後、前方に広がるEvans & Tate(10万ケース)。シラーズが一日1本しか買えない所だ。シャルドネもリースリングも水のように透明で黄色がない。地区一の図体のでかさ。セラードアの対応が悪く早々に退去。
Amberley Estate(6万ケース)は傾斜を利用したワイナリー。どのワインもイケル。シラーズを購入。

 

下ってPierro(7,500ケース)。小さくて気さくな雰囲気が気に入った。狭い壁を利用して魅力的な裸女の絵画展をやっており、ほとんど完売。日本語の「火谷」Fire Valleyがあり、ユニーク。裏山を造成中だった。ピエロ姿のTシャツを買わなかったことを、今でも後悔している。

 

オーストラリアワイン研究の大家James Hallidayがマーガレット・リヴァのワイナリーレストランで最も美味しいと評しているBrookland Valley(8千ケース)のFlutesで昼食を摂る。レストランの前面に大きな池が広がり、無邪気な青空の下、アヒルが(今夜食べられる運命も知らずに?)泳ぎ、懸命に小魚を取っている。池の向こうに林とブドウ畑が広がり、レストランのテラスが池にせり出している。大変ゴージャスである。贅沢はしてみるもので、それで一帯の程度が推し測れる。

Soup of the dayでサーモン入りのポタージュにセミヨンとソービニョンブラン。ビーフカツレツにカベルネ・メルロー。メニューにはアジア系のネーミングが多い。味はともに塩味が薄かった。料金には、この景観料がたっぷりと含まれていた。

 

その後、この地区の代表的な産地CullenとVasse Felixへ向かったが、Cullenは4時閉館で最後の客として滑り込み、明日出直すことにした。Vasse Felixでは洞穴のような部屋でゆっくりとテースティング。noble rieslingとワイナリーマーク付きの帽子を購入した。レストランも楽しそうな雰囲気だった。

 

今日は90qのドライブ。西海岸からの夕陽見物は雲が出て中止。しかし見晴台から見えたMargaret Riverは、密集した力強い森を割って西海岸に流れており、ネーミングの由来を体感できた。

 

快調なワイナリー巡りのドライブは、山間の一車線分しか舗装されていない細い道を走る。対向車が来ると横に寄り、猛烈に土埃をあげ、避けていることを知らせるのが礼儀。オーストラリア人の速度規制のマナーの良さはよほど取締りが厳しいせいもあるのだろう。決してスピードが嫌いでないことは、規制がないところでの猛々しい走り方で分かる。

 

翌朝、マーガレット・リヴァーを離れるのに先立ち海岸へ行き、青い海の高波にサーファーが楽しむ姿を驚嘆しつつ見る。その後、Cape Mentelleに再度寄り、33ドルを払ってやはりシャルドネを買う。樽の洗浄を行っていた若い男性は、水道の仕事で愛知県に2年間いたらしい。日本語で話しかけると、オーストラリア人は途端に可愛く遠慮がちになる。「スコシシカワカリマセン。ゴメンナサイ。キヲツケテ」

 

そういえばこのワイナリーで3日前に見かけた若いカップルは、男性が一橋大学に4年間留学していて、女性も国立市にいたらしく、日本語がそれは達者。ローズウッド・ロッジで今朝会ったカップルは、女性がホッケーをやり、友人がホッケーの選手として富士宮市で働いていたので、二人して富士宮市、京都それに富士山に行ったという。日本は、オーストラリアにとって大変身近なことを知る。

 

Cullenへ行く。セラードアの一人が山登りが趣味、もう一人がアンティークが好き、そして揃ってワインが好き、ということで大いに話が盛り上がった。テースティングの傍ら、レストランに一番近い樹はソービニョン・ブランで樹齢20年、カベルネは30年経つと聞く。有機栽培で手摘み、水も天からの恵みだけに頼っている(灌漑を行っていない)こと、畑の品種分布の説明などを聞く。ところが一番人気のCabernet /merlotは売り切れて置いていないという。おお、ショック。

 

そもそもセラードアのテースティングで、ワイナリーの一番優れたワインや雑誌に紹介されているワインが必ず飲めるわけではなく、有料だったとしても時期によってはsold outだったりする。訪問した時期が収穫前の1月では、前年度の樽熟成のワインもまだ瓶詰め前。所詮、セラードアだけで,ワイナリーを評価するのが無理と言うもの。

それからパースへ向かって帰路についた。まっすぐ戻りたかったのだが、予期せずに海辺を走ったり(おかげで潟で黒鳥を見ることが出来た)、相当な森林浴のドライブをしたりで324kmも走ってしまった。国内空港近くのモーテルに泊まることになるので、夕方6km離れたパース市内も一走りした。英国コロニアル様式建築の風光明媚な観光市街である。途端に日本人観光客が多い。

 

それが夜になると、全くコスモポリタンな多国籍文化圏に変容することを知った。パース駅裏手Northbridgeの500m四方の地帯は、夜間には韓国、中国、イタリア、タイのレストラン、パブ、ディスコ、ゲームセンターが出現し、アナーキーな世界に変貌するのである。昼間垣間見た清潔なパースの町のイメージが、何の脈絡もなく猥雑に急展開する様は、他の国で早々あるものではない。

 

狐につままれたような気持ちで結局入った店は、大賑わいのHan’s Cafe。Rick’s Cafe Americanaでもあるまいが、タイ人が営む中華・タイ料理屋なのだ。タイ仏像が四方八方に鎮座している。働いているのはマレー系中国人であり、タイ人であり、ベトナム人である。それらがかつてのシンガポール空港のキャビンアテンダントの働きぶり、つまり行きも帰りも決して手が空いてはいない、いつも客を見ており、手を挙げれば誰かが必ず飛んでくる、気働きと活気の店である。
Amberleyのシラーズを持ち込み、ビーフサテー、海老の野菜炒めそしてegg noodleで愉しんだ。瞬く飲み干してしまい、ビールも飲んで、しめて30ドルで釣りがきた。アジアのパワーは物凄い。日本は、そして韓国は、タイ、マレーシア、ベトナムそして他のアジア諸国の後塵を浴びようとしているのである。

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