We love Aussie.

成田からシドニー経由でアデレードに到着したのは1月10日。丸2週間滞在して、40のワイナリーを訪問した。それぞれのセラードアで最低5杯、平均8杯のテースティングをしたとすると? といっても、膨大なオーストラリアのワイナリー、ワイン数からすると全くの一部でしかない。

 

今回オーストラリアへ来る前は、3本程度の持ち帰りを予想した。しかし、質の良さとワイナリーへの思いが篭って、結構買い込んだ。心を鬼にして(?顔は恵比寿になって)滞在地で飲んだ。それでも日本へ持って帰るのが8本に膨らんだ。これからニュージーランドへ行くのでなければ、また廉価で日本へ送付することが出来れば、何ダースか買っていただろう。個人輸入の制限数は年間30リットル、普通瓶で40本のようだ。

 

オーストラリアは、ワインを飲むのが実に楽しい国だ。オーストラリア国民は、自国産のワインに親しみと自信と誇りを持つ過程にある。家族揃ってワイナリーへ出かけて愉しむ国なんて他にあるものではない。オーストラリアでは現在、ワインが国民の生活の中に溶け込んでいるのである。

 

世界のあらゆるコンクールや大会で、オーストラリアワインは高い評価を得ているし、それに見合うだけの苦労と努力を惜しんではいない。世界の最高水準のワインが多数輩出されている。しかし、世界水準とは何だろう、メダルの数を競うことが何ほどの意味を持つのだろうか。ワイナリーの特性を遊離し、一部の風潮に併せて味が同一化する、単調な風味に陥ることの懼れも大きいことを考えると、世界水準という怪物ほど得体が知れないことを忘れるわけにはいかない。

 

ワイナリーの周辺に住む人々の嗜好に応え、廉価ながら水準が高い、生活を豊かにする手段としてのワインを提供することの喜びを、我々は世界のワイン造りの歴史を通して知っている。人々の暮らしの食、住、環境、季節等に合わせたワインの提供は、その暮らしを格段に快適にする。

 

オーストラリアのワイン産業に望みたいのは、土地が持つブドウ育成の特性を最大まで高めて欲しい、ということに尽きる。次の二点を指摘したい。
第一に、現在ワインは各収穫地区の各ワイナリーで、同じように多品種で大量に生産されている。ワイナリーに来る客のあらゆる要望に対応するためだとしているが、国民がワインを楽しみ親しんでいる段階では許されるが、マーケットは無限ではなくゆくゆくは飽和する。そうなると道は二つしかなく、海外に販路を広げるか、生産数を調整するかである。いずれも大企業、大資本グループに有利な展開となる。特長がないままに他と同様の生産を続けているワイナリーは、そのとき一気に淘汰される。
これまでもまた現在でも、地域のテロワールを追求し、少量収穫と品質向上に努めてきたワイナリーはある。ワイナリーだけでワインを選ぶのではなく、地域である程度のワインが判断できるように個性づけられないものか。土地の特性を尊重した、他の地区とは差別化した品種によるワインの育成と開発を期待したい。

 

第二の点は、ワイン開発の新世界グループに共通して言えることだが、ワインは食卓から切り離しては考えられないものである。ワインそのものの美味さは重要なことではあるが、いかに地域の食、風土とワインを合わせるかである。その点を離れると、ワインは衰退する。

 

フランスワインで考えると、グラーブの白に合わせる食事を思うとき、そこにぺサック・レオニャン地域の風土が同時に浮かぶ。メドックの赤を羊と併せて飲むときは暑い気候のボルドーの活力と広大なワイナリー、ブルゴーニュのピノ・ノアと共に出された鴨やモンラッシェの輝きを前にした鳩料理と冷涼なコート・ドールの自然、ボージョレ−ワインと爽やかな自然を背景とした軽食、細く連なるロワール地方のサンセールなどで楽しむ河辺の魚貝類、冷え込むアルザスの丘陵地帯とシュークルートやフォアグラ、ローヌ地方の急傾斜と特異な地形から産み出される力強いワインとジビエ料理など、ワインを思うとき、そこでの自然、暮らしと食の傾向、生活を愉しむ人々のエネルギーが重なり浮かぶ。

 

オーストラリアにおいても、例えばバロッサ(アデレード全体でもよいが)の風土と食、マーガレット・リヴァのインド洋に面した自然が産出する食物とワイン、ヤラヴァレー、ハンターヴァレー、タスマニア等々それぞれのワイン産地ごとに楽しめる、地域の特長を活かした食や味覚を、是非世界のグルメとワインファンに提供して欲しい。オーストラリアワインを生産する大地は、総じて肥沃で気温が高いこともあり、ブドウの糖度が増し、果実味豊かでアルコール度も高くなる。これは食と合わせるときに、厳しいチャレンジではある。しかしこの過程をくぐり抜けたとき、ワインの風味は一層豊かになる。それはオージーファンを増すことであるし、オージーの可能性を世界に認知させることでもある。
We love Aussie. オージーオージーの大声援を送りたい。

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