ワイン入門

Part7 付録の知識

@)ワインボトルの形

 

 ワインボトルの形には大きくブルゴーニュ形とボルドー形、それにアルザス形(ドイツワイン形)の3種があって、形でおおよそワインのタイプが予測出来ます。

 

ブルゴーニュワインはなでらかな「なで肩」の形をしています。一方ボルドーのボトルは「いかり肩」をしています。ボルドーワインは長期熟成タイプが多いので、十数年後にワインを注ぐときにでも中に溜った澱がいかり肩のところで止まるように出来ている、と言われています。
また、アルザスのボトルの形は細くすらりとしています。アルザス地方はドイツに近接した冷涼な地域で、爽やかな白ワインが多く醸造されており、この細身がワインの特長を際立たせます。

 

その国独自に使われていたボトル形以外は、世界中のほとんどの国で、この3種のボトル形のいずれかを採用しています。ブルゴーニュ式のなで肩ワインの中身は、ピノ・ノアやシャルドネといったブルゴーニュを代表するぶどうを主に造られたものが多く、ボルドーのいかり肩のワインは、ぶどうをブレンドしてボルドータイプのワインを目指したもの、そしてアルザス形の細いボトルの中身は、フルーティで爽快な白ワインと、おおよその予想が出来るのです(同じフランスの中でもローヌやラングドックなどはブルゴーニュタイプのボトルを使っていて、それはそれで理解するしかありません)。

 

A)ワインを愉しむ温度

 ワインを味わうとき赤ワインは室温で、白ワインは少し冷たく、というのを聞いたことがあるかもしれません。これは比較的冷涼な地で、地下室にワインを保管できる環境の国での話です。適切な室温とは20℃前後のことらしいです。

 

 買ってきたワインの大敵は、温度よりも何より振動です。ワインは家に運ぶのに費やした時間の分だけ保管してから飲むものと、言われています。結構いいワインを買ってきたと思ったら、少しワインを休ませてから開けるようにしましょう。

 

長期に保管するのなら別ですが、日常愉しむためのワインを普通の冷蔵庫に入れておいても構いません。赤ワインは15℃〜18℃、白ワインは10℃〜15℃くらいで提供するようにします。冷蔵庫が10℃だとすると赤ワインは1時間前、白ワインは10分前に出して置けば、適温近くになります。

 

白ワインの爽やかさや適度な酸味は、冷たいほうが効果的です。一方赤ワインは冷たすぎると渋みが強調され、香りも立ちずらいものです。
このことを覚えておくと、応用が広がります。白ワインにもさまざまなタイプがありますので、香りを愉しむシャルドネタイプは強く冷やさないほうがよく、一方ソーヴィニヨンやアルザスタイプは、キュッと冷やした方がよいことになります。赤ワインも軽快に愉しめるボージョレーや日常タイプのワインは、やや冷た目(12℃くらい)のほうが魅力を発揮します。

 

 季節によって愉しむ温度は多少違ってきて、夏の暑いときはさらに冷たいほうが美味しく感じます。白ワインは氷を入れた水に漬けておくと、冷たさが持続します。
冬はあまり冷やさなくともよくなりますが、ワインを暖房の脇や下に置かないようにします。

 

B)デキャンティングは必要?

ワインボトルから大きなワイン用のガラス容器にワインを移すことをデキャンティング、デキャンタといいます。レストランなどで、ソムリエがボトルの首下に懐中電灯(ローソク!)を当てながら、恭しくデキャンティングしているのを見ると、とても高額の銘醸ワインを飲んでいるように思えるものです。
デキャンタは、溜まったワインの澱を静かに取り除いて上澄みを美味しく飲むために必要な作業です。近代製法のワインで、瓶詰め作業のときにフィルターを掛けて澱を除いているワインには、必要ありません。

 

デキャンタするとワインの味と品質が向上すると誤解してか、よくデキャンタを望む人がいます。ワインが空気と触れることで滑らかになり、香りも強くなると思ってのことでしょう。
澱を取り除く必要がある場合を除いて、デキャンタした方がよいと思われるワインは、かなり酸やタンニンが多く味わっても硬くて時間が経たないととっつきにくく感じられる場合のみでしょう。

 

ワインを移し換えることで、確かに味や香りに変化が現れます。でもこの変化がワインの特長を損なう懼れに留意したいものです。ことにブルゴーニュやロワール、スイスワインなどの可憐で微妙な香りがあるワインは、その限られた風雅が何よりの愉しみですが、デキャンタされると香りが飛んで、味が平凡になることがあります。
ワインは味わうだけではなく、香りを愉しむことも大変貴重なひとときですので、ワインの特長に合った扱いが何より肝要です。

 

C)ワインを飲む順序

 一般にワインは軽い順に出すのが良いとされています。赤ワインの前には白ワイン、重く渋いワインの前には、爽快なワインを飲んだ方が良いといわれています。
考えてみれば、これは食事の内容に合っているのです。食事はほぼ前菜と主食とデザートで構成されます。前菜の前にアペリティフ(食前酒)を求める場合もありますが、軽い摘まみにはさっぱりした白ワインが、しっかりした味付けの摘まみには濃厚な白ワインが良い相性を見せるでしょう。赤ワインも2本目に重厚なワインを求めるのは、食事が大体そのような構成で提供されるからです。

 

食事の味付けや内容に応じてワインを愉しむとよいのですから、初めに赤ワインを飲んで、次に白ワインで雰囲気を変えることもよくあります。
デザートのときには日本ではウィスキーやアルマニャックなどのハード・リカーを合わせることが多いようですが、デザートワインやポートワインなどでベスト・マッチを愉しむことも出来ます。

 

D)少しのマナー

 ワインのテーブルマナーというと堅苦しいですが、レストランや友人宅で愉しくワインを堪能するときに覚えておきたい最低限のマナーとしては、「グラスはテーブルに置いて受ける」「ワインは男性が注ぐ」「グラスで乾杯するのは要注意」ということです。
いずれも日本での酒席の慣例で、勘違いしやすいものです。相手(ホスト)が酒やビールを注ごうとするときに、盃・グラスを相手側に差し出して受けますが、ワインの場合は、グラスが大きいので持ったままでいると揺れ易いものです。量も不安定になって大変注ぎにくいものですので、自分の前にグラスを置き、グラスの下を押さえて注いで貰いましょう。

 

 ホストは客のグラスの1/3を目安に注ぎます。中のワインが少なくなったら、注ぐように留意します。注ぐとあわてて飲み干そうとする人がいますが、残っている上に注ぎ足すようにします。
この場合注ぐのはホストの男性の役割です。女性がホストの場合でも、次席の男性が注ぐ役割を果たすようにします。日本の酒席の悪弊で、女性に注がせるのは、タブーです。

 

 「乾杯!」で宴も盛り上がりますが、ワイングラスは大きいわりに薄く造られており、ワインが入って重くてうっかり割れやすいものです。「乾杯」はグラスを持ち上げるだけにとどめ、グラス同士を「カチン」と合わせるのは避けましょう。「カチン」と音がするたびに、レストランのオーナーは「かちん」ときている筈です。

 

| 参考図書、文献 |

本稿を書くにあたっては、以下の図書、文献をちらちらと見ては事実を確認して愉しみました。

  1. 『The World Atlas of Wine, 5 Edition』 Hugh Johnson & Jancis Robinson
  2. 『Hachette Atlas of French Wines & Vineyards』 Pascal Ribereau-Gayon
  3. 『田辺由美のワインブック』 田辺由美
  4. 『How to Enjoy Your Wine』 Hugh Johnson
  5. 『Parker’s Wine Buyer’s Guide, 5 Edition』 Robert M. Parker, Jr.
  6. 『Jancis Robinson’s Concise Wine Companion』 Jancis Robinson
  7. 『ワインの本』 辻 静雄
  8. 『ヒュー・ジョンソン ワイン物語 上下』 ヒュー・ジョンソン
  9. 『ヒュー・ジョンソンのワイン入門』 ヒュー・ジョンソン
  10. 『わいん−世界の酒遍歴−』 アレックス・ウォー

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