ワイン入門

Part6 ワインを味わう

 お気に入りのワインを入手したら、さあ、いよいよ開けて味わうときです。この項では、ワインをより愉しく味わえるための情報を簡潔に提供します。ワインの味わいは「ワインテースティング、評価」としてさまざまな本で出版されています。詳しくお知りになりたい方はそれらをお読み下さい。

| 見 る |

 私はワインが好きです。ですからワインを飲むときには、すぐに手にとって飲もうとせず、まずじっとグラスの中のワインを見ます。グラスの中でワインがどのような状態になっているのかを、静かに観察するのです。初対面の場合は、軽く緊張します。
グラスの柄の下部分を手に取り、少し向こう側に倒し、ワイン液の澄み具合、全体の色合い、そして縁(気液)の色調、さらにグラスを戻したときの滴の流れ具合を見ます。

 

ワインは新しくても、寝かせて熟成されたものでも、注がれたときには健康的に澄み渡っているものです。濁りや陰があるのは正常なワインとはいえません(熟成したワインに見られる澱とは違います)。
全体の色合いをみるには、グラスの柄を持ち上げ少し向こう側に倒し、出来れば白いナプキンか皿を下に利用して見ると良く分かります。同じ赤ワインでもブルゴーニュタイプとボルドータイプ、またはシラー系統のワインとではまったく色合いが異なりますので、その違いを十分に愉しみます。

 

ワインの熟成具合(どの程度若いのか老練なのか)は、やはりグラスを少し倒したときの縁(気液)の色調で分かります。赤ワインは通常まだ年が新しく若いうちは濃紫色を示し、熟成するに従って濃さが消えていき、茶褐色さらにはレンガ色に変わっていきます。
白ワインは逆に薄い小麦色、緑がかった色が、熟成に伴い色を増して黄金色に向かうのです。

 

 グラスを立てて元に戻したときに、グラスの内側にワインの滴跡が残ります。この滴(イギリスでは脚)の具合がはっきりとグラスの内側に残るものは粘着性が高く、一般にアルコール度が高くて構成がしっかりとしたワインと言われています。
ワインを「見る」だけでも結構の情報が得られるものなのです。

 

| 嗅 ぐ |

グラスを揺すらないで静かに鼻の下へ持ってきて、ワインの香りを嗅ぎます。適切なグラスを使う意義がここではっきりします。透明なクリスタルグラスの胴の部分が膨らんでいて、ここにワインの香りが溜まるのです。そこから立ち昇るワインの香りを大いに愉しみましょう。
次いでグラスをゆっくり廻して、中のワイン液を空気に触れさせます。数度繰り返したら、またグラスを鼻の下へ寄せて、再度匂いを確認します。初回のときとかなり印象が異なることに気が付くはずです。ずいぶん深くはっきりと新たな印象を現す場合もあれば、先ほどの芳醇さが消えたかのように感じられる場合もあります。

 

長期間の熟成に耐えられるように作られたワインからは実に多様で複雑な香り−ぶどうの香りを始め樽の匂い、さまざまな果物や花の香り、甘いチョコレートやタバコの香り、さらには皮や草、動物の匂いまでも−が嗅ぎ分けられると言います。
最初に感じ取れるぶどうにちなむ香りをアロマ、熟成して生じる匂いをブーケと言い表わします。
ワインは味わいとはまた違って、香りで十分魅了するものです。その魅力を自分なりに感じ取り、自分のイメージを膨らませ、グラスの中にどれほど自分が愛情を持てるかを判断すればよいのです。

 

何度も匂う必要はありません。一度で十分ですので、思い切り鼻腔を広げて、嗅ぎ取るようにしましょう。

 

ではなぜワイングラスをゆっくり廻して、中のワイン液を空気と触れるようにするのでしょう。
ワインが空気中の酸素に触れることで、香りが立ち上がり、味も滑らかになるからなのです。
私は、瓶の中で眠っていた状態のワインを起こす時間、と理解しています。長い間、瓶の中で時間の経過とともに熟成や移動を繰り返し、それなりにしつけられていた訳ですので、目を覚ましてもらう必要があります。意図的に、熟成を早める効果も期待しています。
そのために、乱暴に揺すったりせずにゆっくり時間をかけてワインと語るようなつもりで、グラスを廻すようにします。なお、一度目覚めてしまえば、いつまでも廻す必要はありません。

 

また相当の熟成を経たワインは、すでに十分空気と親しんでいますので、グラスに移して廻すことはしません。時間の経過に感謝しながら、そのまま押し頂くようにします。

 

飲み終わって、空になったグラスの残香を嗅ぐのも楽しいものです。最初に注がれたときとは違った、まるで熟成しきったかのように、華やかなあるいは甘い香りが楽しめる場合があります。

 

参考までに、嗅ぎ分けの再生法をお伝えします。数回匂いのチェックを繰り返すと、鼻は嗅覚を失い、微妙な違いが分からなくなります。嗅覚を戻すには、自分の匂いに戻るのが一番適切なので、自分の腕先を時々嗅いで嗅覚を戻します。テースティングのときはくれぐれもコロンの類を腕に振らないようにします。

 

| 味わう |

 ワインの香りを十分鼻腔から感じ取った後は、いよいよワインを口に含みます。心ゆくまでワインを愉しむときです。「美味しい」と素直に声に出せればしめたもの。大当たりでした。

 

テースティングの世界では、この味覚を少し分析して評価します。香りでは感じ取れなかった味のバランス、酸味、タンニン分、アルコール度、ミネラル、甘味それに旨味を感じ取ります。
ワインの味の三要素は、酸味、タンニン、アルコールです。これらのいずれもが十分に感じ取られながら、しかもどれもが突出して感じられないものを、バランスが取れたよいワインといえます。
したがって、出来ればゆっくりとワインを舌の上に含み、ワインの特長を自分なりに体得することをお勧めします。

 

プロの試飲会ではワインを飲むときに、わざと口をすぼめて空気と一緒に吸い込んで(音まで立てながら)、ワインの変化や可能性の具合を試します。口の中でワインを噛んだり、舌のあちこちにワインを転がして味の要素を確認して、最後に吐き出します。その後、口や鼻腔に残ったワインの味と香りの余韻を愉しみます。この余韻の時間が長いほど、一般に優れたワインと評価します。

 

しかし、決してこれをレストランで真似しないで下さい。最初はとにかく自分が「美味しい」と思うワインと出会えるように、何度かワインを飲んでみます。そのうちに、このワインをこういう料理に合わせてみてはどうだろうとか、多少癖や難点があっても料理やシチュエーションによっては愉しみ方があるかもしれないと思うようになれば、応用の範囲が広がって、ワインを飲むことがずっと気軽で愉しくなることでしょう。

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