ワイン入門

Part5 ワインを買う!

どういう風にどんなワインを買えばよいのか、最も愉しいことながら、悩ましい点です。
「自分の味覚を信じて、好きなものを選んでよい」なんて言われても、何の助けになるどころか、ますます不安と漠然とした気持ちで二の足を踏みます。書店には、結構たくさんの数でワインを紹介した本や雑誌がありますが、これも、最初にどれを手にとってよいか、大いに迷うところです。
以前の項で説明しましたが、あなたがワインを愉しむのはあなたの生活をもっと快適に過ごすためであって、物知りになるためではないのですから、新しい友人と知り合うつもりで、気楽に身近から接するようにしましょう。ほどなくして、必ずあなたもワインとよく付き合えるようになります。そのために、ワインに少し詳しい友人や知人がいれば、その人に「最初に買うワイン」「信頼が置ける店」「参考になる本」を紹介してもらうのが手っ取り早い方法です。

 

その友人・知人そして専門店が、あなたの相談にこのように受けてくれるなら、信頼してもよい人でしょう。 「これまでどのようなワインを飲んだことがありますか」「どのようなワインに興味がありますか」「どのような食事に合わせてワインを飲みたいですか」
聞かれてまごつくでしょうが、正直に思いを伝えましょう。「美味しいワインを飲みたい」と答えて、相手の反応を見るのもいいかもしれません。

| ワインを買う秘訣 |

どのようにワインを買ったら良いか。これには2つの秘訣をお教えします。産地にこだわる買い方と、ぶどうの品種に着目した買い方です。

 

@)産地にこだわる買い方 

 

ワインを買うにあたって、どの国のワインを買うか、またその中でもどの産地のワインを買うか、を目安とする買い方です。

 

 ワインの醸造量が多い国を順に10カ国列挙すると、イタリア、フランス、スペイン、米国、アルゼンチン、ドイツ、南アフリカ、豪州、チリ、ルーマニアの順になります(98年調査)。網掛けした国が、ワインの世界で言ういわゆる新世界で、それ以外の、もともと数世紀にわたる昔からワインを造っていた国とは異なり、急ピッチにブドウ栽培とワイン醸造の技術を上げて、これまでのワイン界に新風を巻き起こした国々です。希少なワインやユニークなワインを数多く輩出し、すでに上位10ヵ国中の5ヵ国を占めるに至っています。

 

 これらを参考にして、ご自分で関心がある国、訪ねたことがあって思い入れがある国、飲んでみたい国などに見当をつけてワインを探すのは、楽しい体験でしょう。

 

 ワイン大国フランスを例にとってみます。
フランスはワイン界では何でもNo.1と思われるかもしれませんが、現在の生産量はイタリアに次いで第2位。ワイン消費量も1位はルクセンブルグで、その一人あたりの年間消費量70リットルに次いで2位の同61リットルです。ワイン本に換算して一人あたりで年間80本を飲んでいます(ちなみに日本はずーっと少なく世界で50番目ほど。一人あたりで2.55リットル。3.4本程度です)。

 

それでもフランスワインは永い伝統、快適な気候と土壌、優秀な産地の多さ、品質の高さと多様性、美食との組み合わせ、醸造数と醸造法、愛好者の数、影響力、エピソードの多さなどで他国から断然抜きん出ており、燦然とワイン界に君臨しています。

 

フランスには400を越えるAOCワインがあります(原産地統制名称制度を持ったワイン:ラベルに表示されることで生産地や品質基準等が公的に保証されたワイン)。AOCワインはフランスワインの生産量の46%と半数近くを占めるに至っており、年々高品質化の傾向にあります。

ブルゴーニュワイン

産地を代表するのは、ブルゴーニュとボルドーの二大産地です。ブルゴーニュはギリシャ文明の到達と共にぶどうを栽培した歴史があり、小さなワイン醸造所が数多く集まったワイン造りの伝道の地。ロマネ・コンティを始め、ワイン愛好家の垂涎となるワインが宝石のように煌めいています。
他方のボルドーはワインビジネスの中心をなし、大規模で美しいシャトーや仲介業者が並びます。ラフィット・ロートシルトなどの5大シャトーや世界最高値が付くペトリウスなどの優れた醸造所を多数擁し、ワインの格式と品質の高さ、話題の豊かさではブルゴーニュと双璧です。

ボルドーワイン

この二大産地は、単に生産地の違いに留まらず、ワインボトルの形、生産の歴史、味わい、醸造法などことごとくが異なっており、ブルゴーニュワインは“ワインの王様”ボルドーワインは“ワインの女王”と呼称されています。

 

ワインの産地としては、このほかに古城が多く可憐で爽やかなワインを産するロワール地方、見事な泡立ちで魅了するシャンパーニュ地方、濃厚で特異なワインを輩出するローヌ地方、ローマ時代から大量にワインを造っていて人気が高いラングドック・ルーシヨン地方、明るく気軽に飲めるワインが多いプロヴァンス地方、さらに南西部一帯に多様性を誇る南西部地方、などがあります。

 

 それぞれの産地に、特長あるワイン地区や醸造家がさらに数多くありますので、少しずつでも自分でそれらの世界を探索するのは楽しいものです。

A)ぶどうの品種に着目した買い方

 

 ワインがなんとも買いづらいひとつの理由には、ラベルの分かりにくさがあると思います。なんと読めばよいのか、英語でも面食らうのにフランス語が氾濫し、生産国ごとによってイタリア語、スペイン語、ドイツ語などに溢れ、しかも各国のワイン法に従って細かく記載されているので、手にしても目が点になるようです。さらにワイナリーごとにラベルのデザイン、色、大きさ、表記の仕方が千差万別。内情を知っていなければ何も買えないような気にさせられます。ラベルの記載項目が多くて長いほど高くてよいワイン?という疑問も生じます。何か手立てはないものか。

そこでアメリカで考え出され、あっという間に各国に(ワインの旧世界の国々までにも)広まったのが、ぶどうの品種を大きくラベルに記載する方法です(いかんせん英語ですが)。これまでの表記がブランド名や生産社名が主体だっただけに、ぶどう品種でまず判断して、その後に細かいデーターを読み取ればよいのです。この手法のラベルは、新世界のワインを中心として比較的廉価で飲みやすいタイプに多く使われていますが、最初の手がかりとして役に立ちます。

 

ぶどうの品種は、国ごとに多種多様です。しかし、世界的に通用しているワイン用の、いわゆる国際的なぶどう品種は次の9つです。これを味わいとともに覚えておくと、実に買いやすい目安になります。

 

赤ワイン用のぶどう

  1. カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)
    • 世界的に最も有名なぶどう品種
    • フランスボルドーでワイン造りの基本として最も多く使われる
    • タンニンが多く深く濃い色合いで複雑な香り
  2. ピノ・ノア(Pinot Noir)
    • フランスブルゴーニュの単一品種で、比較的冷涼な土地で育つ
    • 育てるのが難しいものの、世界中で工夫が進み醸造家の特長がよく表れる
    • きらきらと澄み切って繊細ながら果実味豊か
  3. メルロー(Merlot)
    • ボルドーのポムロール地区やサン・テミリオン地区で昔から使われていた品種
    • 早熟で扱いやすいので世界に広まった
    • 滑らかでソフトだがワインの味わいは深い
  4. シラー/シラース/シラーズ(Syrah/Shiraz)
    • フランス北部ローヌの主要な品種で、比較的暑い国・地域で栽培されることが多く,オーストラリアを代表するぶどうとしても知られる
    • ドライフルーツをかじったように濃厚で深い甘味
    • フランスではシラー、豪州ではシラーズと呼ばれる

白ワイン用のぶどう

  1. シャルドネ(Chardonnay)
    • 白ワインを代表する濃厚で辛口、優雅な品種
    • フランスブルゴーニュの単一品種だが、いまや世界中で栽培され、木樽熟成が多い
  2. ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)
    • ボルドーやロワール地方で育成された品種
    • 芳醇で爽快な味わいが持ち味で、草原の香り
  3. リースリング(Riesling)
    • フランスアルザス地方やドイツなどの寒い地域で栽培されていた品種
    • かつては甘口の印象。世界に流布するにつれ土地、醸造家によってまったく異なる味わいに変化したがデリケートで果実味を有する
  4. セミヨン(Semillon)
    • フランスボルドーでは偉大な甘口ワイン品種
    • 各地に流布されるにつれドライで青い味に変化しソーヴィニヨン・ブランとブレンドして使われることが多い
  5. ゲヴェルツトラミネール(Gewurztraminer)
    • アルザスやドイツで栽培されていたが、酸味が強くブレンドすると果実豊かな風味を醸す品種
    • なんとも表記・発音しづらいが“ゲヴェルツ”で通用する

以上の国際的な9品種以外にも有名なぶどうの品種は多く、例えば以下の品種もよく目にします。

  • ガメイ(Gamay)
    フランスボージョレー地区の明るい赤ワインを造る品種
  • ジンファンデル(Zinfandel)
    アメリカを代表する赤ぶどう品種
  • サンジョヴェーゼ、ネッビオーロ(Sangiovese,Nebbiolo)
    イタリアを代表するトスカーナ州、ピエモンテ州の代表的な赤ぶどう品種
  • シュナン・ブラン、ムスカデル(Chenin Blanc,Muscadet)
    フランスロワール地方で知られた白ワイン用のぶどう品種。鮮烈で爽快な味わい

これらの中で自分の好みに合うワインがきっとあるはずです。その品種を覚えておいて、同じ品種名で同じ地域のもの、さらには違う国のものをと試していくうちに、驚くほど自然にワインの知識が身に付いてきます。

なお、英語圏のワインショップでワインを買おうとするときには、発音の変化に注意が必要です。カベルネはキャバネ、ソーヴィニヨンはソーヴィノン、セミヨンはセミロンになる。シュナンがシェニンで、シャルドネはシャードネー。ピノ・ノイと言われてもたじろがないように。

B)値段による6段階

 ワインを買う目安として、視点を変えて値段の点から見てみましょう。
ワインはどのくらいの値段が愉しむのに相応しいと考えられるでしょう。

(小売価格)

  • 日常家で飲むためのワイン ・・・・・・・ 1,000円前後
  • 週末や友人と楽しく飲むとき ・・・・・・ 2,000円前後
  • 美味しい料理にあわせるとき ・・・・・・ 3,000円程度
  • 親しい人への贈答用・・・・・・・・・・・・ 3,000円〜5,000円程度
  • 特別な催しや記念日・・・・・・・・・・・・ 5,000円〜1万円程度
  • 大盤振る舞い・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1万円以上

アメリカの著名なワイン鑑定家ロバート・M・パーカー・Jr氏は、世界中のワインを次の値段で評価しています。

A : 廉いワイン 10$以下
B : 標準的 10$〜20$
C : 高め 20$〜35$
D : とても高額 35$〜60$
E : 贅沢なワイン 60$〜100$
EE : 超豪華 100$〜175$
EEE: 無言 175$以上のワイン

1$=100円で換算すれば、なるほどと思えます。美味しいワインをなるべく廉価で毎日飲みたいものですが、以上をご参考ください。

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